(ISSN 2435-1261)

共創学 3巻 1号 (Cocreationology, Vol.3, No.1)

原著論文

差異が駆動する音楽実践 ―音楽ワークショップにおける導入部分の相互行為分析から―
石橋 鼓太郎
Vol. 3, No.1. pp.1-13, 2021/5/6

概要:異なる背景を持つ人々が居合わせる音楽における共創のメカニズムを明らかにするためには,音楽を通じて人々の間に生じる,さまざまなレベルにおける差異と同一性の関係に着目する必要がある.しかし,これに焦点を当てた従来の民族音楽学は,音や身振りのミクロな差異が同一性の感覚を生み出すことを重視しており,人々の間に共有される背景の差異を捉え損ねていた.これを考慮に入れて問題を整理した後,「野村誠 千住だじゃれ音楽祭」における音楽ワークショップの導入部分の相互行為を分析した.その結果,共有する背景の差異がその場面に対する認識や態度の差異を生み出し,それを受けて各々が行う実験的な試行錯誤の連鎖によって,共創的に音楽が立ち上がり展開していることが明らかになった.

キーワード:音楽,ワークショップ,差異,文脈,部分性

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原著論文

共創と共生 天然知能で読み解く「共生学宣言」
郡司 ペギオ 幸夫
Vol. 3, No.1. pp.14-27, 2021/10/25

概要:「共生学宣言」は,共創と密接な関係にある共生を,様々な領域の専門家が論じるアンソロジーである.本稿では共創の核に,天然知能的構造,特に内在するトラウマ的構造が認められることを論じた後,それが共生の現場に広く認められることを,共生学宣言で論じられる具体例の中に見出していく.それによって共にトラウマを内在する意味で共通点を持つ共創と共生が,共創学は「創る」に焦点を当て,共生学は「異質なものとの共存」に焦点を当てている点で異なることを示し,両者の相互依存性を明らかにする.

キーワード:共創,共生,天然知能,トラウマ,アンチノミー 

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原著論文

表現する身体と非同期の世界
西 洋子
Vol. 3, No.1. pp.28-38, 2021/10/25

概要:本稿では,年齢や性別,障害の有無や表現の経験等の異なる人々による創造的な身体表現のワークショップの実践手法を,オンサイト-〈リアルタイムである〉からオンライン-〈リアルタイムではない〉へと転換することで逆照射されることとなった「表現する身体は非同期の世界に何をみいだすのか」について,実践の内にある者の立場から論じることを試みた.具体的には,新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言発令直前である2020年4月2日から5月31日までの約2か月間,東京都と宮城県を拠点とする2つの団体とそれらに関連する人々がオンライン-〈リアルタイムではない〉で行った表現を対象に,やりとりした174の表現映像を検討した.本実践において,著者自身の身体を基盤に,意識に浮かび上がってきた事柄を「心理的時間の動態」,「感覚以前」,「不確定さ」という3つのキーワードから検討した結果,表現する身体は,心理的時間の動態や身心の共振を感受すること,他者や環境とのかかわりの中で感覚以前に沿って行為すること,さまざまな感情のもとに不確定さを求めること等によって,常に新たに表現を生成し続けていくことが明らかとなった.

キーワード:身体,表現,社会実践,オンライン,非同期の世界

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